養育費は過去に遡って請求を受けることはあるのか

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行政書士明和事務所

行政書士 吉田 重信

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養育費の支払いに関して想定されている一般的なイメージとしては、
離婚の際に合意、または調停等で決した上で、離婚後に支払われるといった感じだろう。

実際にそういった形で取り決める事例は少なくないし、
履行確保といった観点から見たら、この流れがデフォルトと見るべきだ。

 

しかし、協議離婚の際には取り決めをしなかったり、
何かの引き換えとして養育費請求権を放棄しているような事例も見受けられる。

当事者同士がそれで納得しているのならば外野がとやかく言う話じゃないけれど、
これらは法的安定性という観点からでは問題大ありと言えるだろう。

 

養育費請求権ってのは子が保有している権利であって、
親権者からの請求はその権利を代理行使されているに過ぎない。

親権者は権利を勝手に放棄できる立場にないし、子の権利行使をやめさせられる権限もない。

だから、仮に前述のような約束や契約をしていたとしても、
後々になって改めて請求を受ける恐れは残る。

 

無論、養育費も債権であることには変わりないから時効の適用も考え得るが、
一般的な感覚で見てもかなりの長期だから、それをアテにすることはできないだろう。

参考までに、だが、養育費の時効は大元の養育費請求権自体が10年
月払いの支分権は5年で時効にかかると言われている。

したがって、この範囲内の養育費に関しては、
過去のものも遡って請求を受ける可能性はあるということだ。

 

根拠となる法律は民法166条及び168条なので、
気になるようであればそちらを参照するように。

 

 

民法

第百六十六条

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

第百六十八条

定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
二 前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。
2 定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

 

 

養育費請求権はそういった背景のある権利だから、
これについてはもう済んだ話だろう、といった言い分が通りにくい面がある。

それ故に、改めて請求される側にとっては如何ともしがたい話になりがちだ。

 

金銭債権ってのは、解釈や考え方の違いで結論を変えられるような話じゃない。

四の五のは関係なく債権の存在と期間を見て、
支払っているか支払っていないかだけで結論が出てしまう話だからね。

大分時間の経った後の請求に関しては理不尽に感じるような事例もあるけれど、
これは子がいる以上は仕方のないことなんだ。

親子の縁ってのは、そういった面においても当事者の意思のみで切り離すことはできないわけ。

 

 

だから養育費に関しては、寝た子を起こすな、は通用しない。

 

 

なんで今になって、って話は充分にあり得る話だから、
やはり離婚時にちゃんと決めた上で支払っておくに越したことはないな。

相手がいらないと言ったから、と放置してきた人は、
少なくとも子が成人するまでは請求される可能性はあると考えていた方が良いだろう。

 

これについては法的な話なんかはさておいて、
親としての責任だから一概に男性側を庇うことはできないな。

まぁ、ウチに来る人で「養育費は払いたくない」なんて人はいないから、
事務所でこういった話が問題となることはないんだけれど。

 

余所の話なんか聞くと結構、おざなりで済ませちゃっているケースがあるから、
やっぱり無視はしていられない話題だよね。

 

 

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