離婚に私情は絡めろ、トコトンな
離婚案件で弁護士がついたりすると、
客観性を持った上で冷静な対応を取るように指示される場合がほとんどだ。
でも、そういった一歩引いた態度に対して、疑問を呈する当事者達は少なくない。
自分の家の中のことなのに、
なんで他人事かのようにしていなければならないんだ、という訴えだね。
しかし、これについては弁護士達の言い分にも一理ある。
相手方にも弁護士がついていて、既に話が司法の場に行ってしまっている場合、
採算を度外視した情を尽くすような対応は命取りになりかねない。
手続き上のリスクを勘案して、そう言わざるを得ない立場でもあるんだ。
例えばだけれど、子どもとの関係を重視して、
全てうっちゃっちゃっていいから、相手に遜るような対応を希望した場合。
こんな風に依頼人が争うことを希望していなかったとしても、なかなか難しい面はある。
弁護士達は職務として他人の代理人を引き受ける関係上、
依頼人の権利上の利益を徹底的に追求する義務を課されているからね。
それ故に、既存の権利を放棄するような対応については、
懸念を示されてしまうケースも多い。
これは事情は察するし、どうにもしがたいことだと思う。
ただ、争うつもりなのか、波風立たせず交渉するつもりなのか、
話を聞いていると方針がよくわからない事例も存在する。
弁護士が錯乱しているかのような事例も見られるから、それはどうかと思うけれど。
特に男性の離婚案件は一般的な法の理屈が通らないこともあって、
勢いよく引き受けたはいいが、実際の不条理さを目の当たりにして消沈する弁護士は多い。
よくわかっていない世界なのならば、安易に専門家ヅラなどしないことだ。
結局のところ、家庭内の問題に対して権利義務上で結果を出そうとしても限界はある。
どんなに一生懸命やる気があったとしても、これはどうしようもない話なんだ。
そういった限界事案の背景もあって、
離婚に私情を挟み込むような対応は眉をひそめられる傾向にある。
しかし、当事者にしたら関係ない。
そんな理由で膝を折れるような話ではないし、
そんな領域の中で結論を出されてはたまらない話だからな。
もっと言うと、離婚に私情すら絡められないような人間に、
家庭内の問題について他人に真剣に聞いてもらえるような言葉を吐くことなどできない。
そもそも、離婚における弁護士達の対応はここが矛盾しているんだよな。
裁判所に限った話じゃないけれど、
離婚において見られるのは一生懸命やっていく気があるのかどうかだよ。
そういった場面で権利上の利益を勘案した「正しい立ち回り」なんかしていたら、
かえって信用を失ってしまう。
僕自身も鉄火場でそんなことをあくせくとやっているヤツを見たら、
「あんだ、コイツ」と思うからな。
そんな皮算用なんかよりも、
もっと一生懸命に出していかなければならないことはあるだろう。
離婚に私情は絡めろ、トコトンな。
そうでなければ、出てこない言葉がある。
権利義務上で動かしようのない話を動かしてきたのは、
いつだって、そういった不条理で愚かしい採算度外視の言葉であり、行為だ。
手続き上で正しい行為かどうかじゃなくて、
まず真剣な話として聞いてもらうためにも必ず必要なことだよ、これは。
逆に言うと、戦略的な立ち回りはそういった面で疑いの余地が残るから、
どんなに声高に訴えても結果が伴わない場合が多いのだと思う。
僕だって、これまでずっと私情ありきだよ。
不合理?
いいや、バリバリ絡めるね。
なんか文句あんのか、コラ。
弁護士ではない以上、前述の義務を課される立場でもないし、
とやかく言われる筋合いはない。
そうでなければ、依頼人に対しても出てこない言葉があるんだ。
行政書士明和事務所
吉田 重信
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