セクシー田中さん問題を通して見るリスク管理
あまりのスピード展開で、事態を聞いた時には驚いたな。
僕はこの方の作品は原作もドラマも見てはいなかったのだけれど、
Twitter(現:X)上での発言や行動は話題になっていたので知っていた。
まさかこんなことになるとは、ね。
亡くなった原作者の方に対してはご冥福をお祈りいたします。
他に取れる手段はなかったのか、とも思うけれど、
創作やっている人間の繊細さを考慮すると、ある意味では必然とも言える。
故に、創作者と直接関わることの多いTV業界には、
もっとそういった点についての気遣いを期待したかったところだ。
これは一般的には、なかなか理解されがたい面もあるよね。
僕は漫画家じゃないけれど、文章で勝負している点では創作者の端くれでもあるから、
原作者の方が抱えていたしんどさは、ちょっとは理解できるつもりだ。
漫画にしても文章にしても、自分の内面の柔らかい場所から取り出したものを、
一般の人にも受け取りやすいように仕上げて出している作品なんだ。
こういった表現が正しいのかはわからないけれど、
日頃からそういったものをむき身のままにしているからできる芸当とも言える。
普通の人は大抵、メンタルブロックするためにガードをかけているものだろう。
社会人として社会性をもって生活するためにも、それは必要なことだよね。
でも、創作者は作品のために敢えてそれをしない、
若しくは元々それができない、する感覚がないという人達なんだ。
だから、常に柔らかい部分がむき出しの状態で生きているから、
外部からの刺激に対しては、ものすごく敏感。
良いものについてもそうだが、悪いものについてもだ。
とても影響を受けてしまうし、自分にだって人一倍、絶望する。
事情を全て知っているわけではないから断罪なんてできないが、
とにかく、一人の創作者がこんな結末を辿ってしまったことがとても悲しい。
あと、もっと驚いたのが、事態に対するメディア上での展開の速さだな。
訃報が発表された直後から、「脚本家へとバッシングが流れる地獄」とかいって、
世論に対して予防線を張るような記事がヤフーニュースとかで取り上げられていた。
まだ、実際にバッシングとかが始まる前に、だぜ?
いきなりそれかよ、と、あっけにとられたな。
もちろん、バッシングされていろとか物騒なことを言うつもりはない。
ただ、いくらなんでも対応が早すぎる。
人が死んでんだぞ。
初手でフタをするようなことをして、世間がどう思うとか考えなかったのかね。
確かにリスクヘッジは大事だよ。
でも、そのやり方によって更なるヘイトを生んでいるようじゃあ、
なんのためのリスクヘッジなのかわからない。
ネット上のコメントなんか見ると、みんなに見透かされているよ。
しょっぱなからの保身行動はどうなのよ、とね。
これ、もし局内弁護士とか外部のコンサルが、
「今、予防線張っておくべきですよ」とか言っていたのだとしたら、とんだミスリードだ。
企業内リスクヘッジを一から学び直してこい、というレベルでな。
炎上を防ぐどころか、むしろお前のせいで炎上しているだろ。
もちろんこれは所詮、憶測に過ぎない話だが、
そうではないことを切に願う。
こういった事態では、初手は謝罪一辺倒のみが吉。
自分がやったわけじゃないとかそんなのは置いておいて、
視聴者に迷惑かけてショックを与えてしまっているんだから、まずはそこからだよ。
どうしても一つ付け加えたいのであれば、事実確認を徹底してゆくくらいだな。
それ以上のことは、状況がはっきりしてくるまでは黙っておくべきだ。
バッシング云々については、事実確認ができたあとに、
世論の流れを見た上で検討すればよかったんだ。
とにかく、こんな残念な話はもうたくさんだよ。
本来、自分の創作物のメディアミックスなんて、ワクワクするような話のはずなのにさ。
ちなみに報道以後、原作者の気持ちに対する各々の解釈に対して、
「違う」、「普通に傷ついただけだ」等の意見も見られた。
しかし実際のところ、それは本人にしかわからない。
ゆえに故人の気持ちへの解釈に対して、
「それは違う」などと一方的に断じたりするのはナンセンスだろう。
多様な意見はあって然るべきだと思う。
夜中のダムって、行ったことあるかい?
僕は昔、日暮れに迷って夜の八ッ場ダムに迷い込んだことがあるんだけれど、
めっちゃ身が竦むくらい恐ろしいところなんだよ。
普通に傷ついただけでそこから飛び込むなんて真似はできないと思うな。
行政書士明和事務所
吉田 重信
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