自分から離婚を申し立てると不利になるのか
これは離婚相談の中ではメジャーな質問だね。
どちらとも煮え切らない状態のまま相談に流れるケースが多いため、
この手の問い合わせは一律に提示できるような答えの欲しいところだ。
それ故に、考察してみる一定の価値はある。
こういった質問に対して、法的な観点による回答は知識で答えて終わりになるし、
最終的にはケースバイケースといった話にしかならないだろう。
だから、離婚という協議一般として捉えた上で、
何をもって有利不利と言えるのかといったところから考えてみよう。
先に結論から言わせてもらうが、原則として先に言うと不利だよ。
これは交渉時における力関係から見ても、
自分から何かを要求するということは、それ相応の対価を要求される立場になるからだ。
したがって、協議の流れという観点から見ても、
自ら離婚を要求すれば、相手から条件を突き付けられることになるだろう。
また、相手が離婚を承知しなかった場合、
こちらの離婚意思が発覚すれば、より頑なな態度になってしまう恐れもある。
特に明確な離婚事由のないケースでは、
先手を打たれてしまうと取り付く島もなくなってしまう。
だから、いざという時は調停、裁判等の表沙汰にして、
離婚を要求できる立場でもない限りは、自分からの離婚請求には慎重になるべきだろう。
ただし、例外もある。
それは相手の有責性が明確な場合、
そして既に別居等が続いていて解消の余地がない場合だ。
こういったケースではこちらには離婚を要求する明確な理由があるため、
相手の方から条件を突き付けられる可能性は低い。
相手は条件を突き付ける以前に、自分の行動に対する責任を問われる立場だからだ。
別居については、解消するよう要求をし続けて、
それでも向こうが拒否しているという状況を抑えた上で行うとなお、良いだろう。
そのように婚姻が破綻する状況を向こうが自ら作り出している状態ならば、
離婚請求という行為は条件を要求するインプレッションを与えない。
それを甘んじて受けなければならないという話は、
一般的な観点から言っても、法的な観点から言ってもないからね。
あと、よく勘違いされがちなのが、
離婚を要求したら、要求した側が慰謝料を支払うことになるのではという話。
これは所謂、離婚自体慰謝料という概念が大元となった話だと思うけれど、
離婚自体慰謝料はあくまでも有責行為による不法行為責任と区別するためのものだ。
特段の理由もなく配偶者の地位を失うことを保護法益とした概念であって、
自らの行為が発端となった離婚は保護の対象とならない。
したがって、離婚要求に一律に慰謝料が認められているわけではないから、
相手に明確な理由がある場合は遠慮する必要はないだろう。
とにかく、離婚を要求する場合は自分達の状況をよく見ることだよ。
お互いに既に冷え切っていて、
書類上で済ませようと考えているのであれば難しいことはないのだけれどね。
今のご時世、取れるものは取っとけみたいな考え方がメジャーになってしまっているから、
最近のケースじゃあ、そういった話はめっきり聞かなくなってしまったな。
くだらない誘惑や、無駄な知識を入れる機会が多いからだと思う。
家庭内の問題ってのは、本来、
そういったものだけで解決すべき話じゃあないんだけれどな。
皆、もう少し大人になってくれたら楽なんだけれど。
行政書士明和事務所
吉田 重信
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